安心安全、お米で育った養鶏のタマゴ「こめたま」

こめたまとは?

青森県のトキワ養鶏場が養鶏飼料の自給率アップを目指し、地元の休耕地を活用して飼料用米を生産し、その飼料用米を配合して育てた鶏の卵を「こめたま」として販売している。

飼料用米でも美味しい卵が出来る

鶏卵の9割以上、鶏肉の約7割は国産である。にもかかわらず、とうもろこしなどを主体とした養鶏飼料は9割を輸入に頼っている。近年、石油価格の高騰やバイオ燃料の開発によって輸入穀物飼料の安定確保が難しくなってきており、飼料の国内生産の必要性が高まっている。そこで注目されるのが自給率の高い米を飼料とする飼料用米養鶏だ。

約4万羽を飼育している青森県藤崎町にある常盤村養鶏農業協同組合(トキワ養鶏)では、青森県内で増えている休耕地に着目、休耕地で飼料用米を生産し、国内産飼料の安定確保ができれば、飼料の自給率向上、さらには、地元の農業活性化にもつながると考え、2006年、3年以上放置されていた4アールの休耕地に「ベコあおば」を作付けした。秋には約1トンと予想を上回る収穫をあげ、県内における飼料用米生産の可能性を切り開いた。

飼料用米を含め国産材料75%の飼料で飼育された鶏の卵「こめたま」
飼料用米で育った鶏の卵は黄身が白っぽいのが特徴。

いうまでもなく、従来の飼料で飼育されている鶏に比べ、卵の品質、味が低下したのでは、事業として成り立たない。そこで同組合では、収穫した飼料用米でおいしい卵ができるかどうか150羽を対象に検証。これまで飼料に約6割配合していたとうもろこしを、すべて飼料用米に置き換えると同時に、昔ながらの飼育法である「平飼い」で飼育した。

数か月後、極めて良好な結果が明らかになった。産卵は順調で、卵もあっさりしているがコクがあり、黄身もきれいなレモンイエロー、味も栄養面もとうもろこしで育てた卵に比べそん色がない。むしろその色味などは消費者に新しい価値を提供できるチャンスと見ることができた。

農家を説得し、飼料用米の生産を拡大

この事業に対して、2007年には、助成金も得られることになり、事業の商業ベース化を決意。3戸の農家の協力を得て、「むつほまれ」「ベコあおば」ほか5品種を1.5ヘクタールの休耕地で生産し、400羽を飼育した。同年10月からは本格的な事業に乗り出し「トキワの玄米たまご・こめたま」のネーミングで、6個パック600円で県内のデパートや地元直売所に委託しての販売を始めた。

順調に見えたプロジェクトだったが、飼料用米の生産規模を拡大しようとしたとき、協力農家の説得という問題が浮上した。壁となったのは米作り農家のプライドだった。冷害に悩まされながらもおいしい米作りに力を注いできた地域の米作り農家にとって、人の口に入らない米を作ることには大きな抵抗があったのだ。

そんな農家を町農政課の課長と一軒一軒歩いて回り、飼料用米養鶏の将来性を説いた。その甲斐あって、2008年には協力農家を15戸まで増やすことに成功、作付け規模は15ヘクタールまで拡大した。その一方、鶏舎の設備も拡充。ケージ飼いも取り入れ、1500羽へと規模を拡大した。

また、流通ルートの拡大にも積極的に取り組んだ。同年5月には、パルシステム生協連合会から販売要請を受け、インターネットで期間限定販売を行った。6個入り480円、共同購入で週60パックの限定販売。味のよさと「安心」感から固定客もつき、上々の評判で毎週売り切れになるほどだった。こうした評判が広がるにつれて、引き合いも増え、現在、通信販売を中心に全国的に販売している。

37.5ヘクタールに規模拡大

消費者の理解を得られたこともあって事業は順調に伸びている。2009年は37.5ヘクタールに飼料用米を作付けした。将来は、トキワ養鶏グループの鶏45万羽すべてを飼料用米で育てたいと意欲を燃やす。

課題も残されている。筆頭は価格で、市価で1個100円というのは、通常の卵の3倍を超えている。今後は生産コストの削減に取り組み、将来的には1個50円を目標に低価格化を図りたいとしている。

また、トキワ養鶏は、飼料用米の生産が地域、さらには日本の活性化につながるとの信念に基づき、飼料用米養鶏の普及活動「こめたまプロジェクト」を精力的に進めている。組合長の石澤直士氏が先頭に立ち、米作り農家の視察受け入れや講演を積極的に実施。飼料用米が普及すれば休耕田に稲穂が戻り、米作農家が活性化する。米を飼料として用いる畜産業者が活性化し、付加価値の高い卵を口にする消費者に喜ばれ、さらには海外に流出していた飼料用穀物の代金が国内で流通することで、高い経済効果も生まれると語る。消費者への理解促進と販売促進のためにイベントや展示会にも積極的に参加し、PRを図っている。

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